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当院の糖尿病治療に対する考え

当院の糖尿病治療に対する考え

私は動脈硬化のカテーテル治療を行う医師として、30年以上にわたり多くの患者さんを診療してきました。この分野での深い経験を通じて、手術技術や治療戦略に自信を持っています。しかし、糖尿病を持つ患者さんの治療では、困難に直面することがありました。糖尿病患者さんでは動脈が硬くなりやすいことから、カテーテル治療がより困難になります。特に、血管壁にカルシウム(石灰化)が多く沈着するため、血管を広げるためのバルーンカテーテルが通りにくくなります。

糖尿病患者さんの足の治療には、血流不足だけではなく、糖尿病神経障害による痛覚の低下や、傷の治りが悪く細菌感染を起こしやすいといった問題があります。

「血管だけみてたら駄目なんだ、全身をしっかり管理しなければ・・・」。

勤務医時代のさまざまな経験から、私は糖尿病の治療を習得するために、ありったけの努力をして取り組むことを決意しました。糖尿病患者さんの足は血管だけでなく、皮膚、筋肉、骨、神経、脂肪の健康も考慮する必要があることを学びました。私はカテーテル治療の専門医ではありますが、糖尿病の総合的な診療にも力を注いでいます。私のクリニックでは、糖尿病療養指導士の資格を持った看護師、管理栄養士、理学療法士、臨床検査技士、診療放射線技師が多職種によるチームを形成し、患者さん一人一人の状態に合わせた治療を提供しています。

糖尿病とは?

糖尿病は、体がブドウ糖(血糖)をうまく使えなくなり、高血糖の状態が持続する病気です。高血糖の持続は、体のさまざまな臓器、組織に障害を来します。
通常、私たちは糖分(炭水化物など)を摂取した際には、血糖の上昇に備えて「インスリン」というホルモンを膵臓から分泌して、血糖を一定の状態(70~150mg/dl)に保っています。しかし、糖尿病の人では、このインスリンの分泌が低下し、からだの各組織でインスリンがうまく機能しなくなります。その結果、血液中のブドウ糖が適切に処理されず、血糖値が高くなります。
糖尿病には主に2種類あります。1型糖尿病は、体の自己免疫系が膵臓を攻撃し、インスリンを作る能力を失うことで起こります。一方、2型糖尿病は、体がインスリンに反応しなくなる(インスリン抵抗性)ことや、膵臓が十分なインスリンを作らないことが原因です。肥満や運動不足が2型糖尿病のリスクを高めます。
他にも、妊娠中に発生する妊娠糖尿病や、慢性膵炎、ステロイド使用、肝硬変などに関連する糖尿病もあります。
糖尿病の一般的な症状には、頻繁な尿意、強い喉の渇き、突然の空腹感、疲労感、視力の低下、傷の治りが遅い、手足のしびれや感覚異常などがあります。
 
※糖尿病の診断基準は別記

糖尿病を放置すると危険な理由?

糖尿病の初期段階では痛みなどの明らかな症状が少ないため、見逃されがちです。しかし、治療せずに放置すると、様々な深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
糖尿病の長期的な合併症は、主に神経、目、腎臓、血管などに影響を及ぼします。持続的な高血糖により、神経機能障害(糖尿病神経症)、目の障害(糖尿病網膜症)、腎臓の障害(糖尿病腎症)が起こることがあります。これらは、身体の重要な部分が徐々に機能を失っていく過程です。これらが徐々に進行すると最終的には、足の壊疽、視力障害、腎不全(人工透析が必要になることも)、足の切断、失明、心筋梗塞や脳梗塞など、生命を脅かす深刻な病状へと進行することがあります。
また、糖尿病は体の免疫系にも影響を及ぼし、がんや感染症のリスクを高めることが知られています。また、心不全や認知症の危険因子ともなり得ます。
短期的には、血糖管理が不十分な場合に「糖尿病性ケトアシドーシス」(血中にケトン体が増え、体が酸性に傾く危険な状態)や「高浸透圧高血糖状態」(血糖値が非常に高くなることで脱水や意識障害を引き起こす)といった急性の合併症に陥るリスクがあります。

※※糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧性高血糖状態については別記

糖尿病の治療について

糖尿病治療の目標は「糖尿病のない人と変わらない寿命と日常生活の質を保つこと」です。この目標を達成するためには、定期的に血糖値やHbA1cを測定し、血圧、脂質、体重の変化を観察します。健康を保つためには生活習慣の改善、特に食事や運動が重要です。また、必要に応じて経口薬やインスリンなどの薬物療法を提供します。

個別医療の提供と患者教育の重要性

患者さん一人ひとりの状況は異なります。職業、生活習慣、家庭状況、経済状況など、各人の状況に合わせた治療方針が必要です。たとえば、不規則な勤務時間を持つ患者さんには、自宅でできる簡単な運動や、日々の健康的な食事計画の立案をお手伝いします。また、家族の世話で忙しい方には、時間を節約しながらも栄養バランスを考慮したお惣菜や冷凍食品の賢い利用方法を提案します。

さらに、糖尿病に対して無関心や理解が不足しているために治療を中断しがちな患者さんには、まず糖尿病のリスクと合併症についての理解を深めてもらいます。患者さんが自分のペースで治療に取り組めるよう、無理なく実行可能なステップから始めることをお勧めします。治療の継続性を保つことが重要です。

一方で、糖尿病の治療に熱心すぎて、血糖やHbA1cの数値にストレスを感じている患者さんには、「あなたの努力を非常に高く評価しています。でも、健康は血糖値だけでなく、心の状態も含めたものです。気持ちのゆとりをもつことも大切です。」とアドバイスします。

まとめ

糖尿病の治療と合併症の予防には、医師を中心としたチームアプローチが不可欠です。糖尿病の患者さんが抱える問題に応じてチームで連携し、個々に合った治療やアドバイスを提供します。私たちはチーム医療によって患者さんの健康維持を支援し、「人生を最後まで歩き通す」ことを目指しています。

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